不動産コラムColumn
IT活用重説社会実験検討会
電子書面交付実験も実施
国土交通省は2月12日、「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」(座長・中川雅之日本大学教授)を開いた。今回の会合では、これまでの社会実験などの結果を踏まえ、新たに個人を含む不動産売買におけるIT重説と、「重要事項説明書等」(宅建業法35条、37条書面)のデジタル交付についても社会実験を開始することを決めた。
法人取引実験は継続
同検討会では初めに、これまでのIT重説の実施状況の報告が行われた。
17年10月から本格運用されている賃貸取引でのIT重説の実績は、19年1月末時点で2万5607件。加えて、「(可能な)専用システムを介さないケースもあるため、実数は更に多い」(同省)。
そうした中で、IT重説に起因するトラブルについて、免許行政庁へ寄せられた相談はゼロ件。IT重説実施後のアンケート結果を見ると、「宅地建物取引士証の提示」は「受けた」が99.3%、「機器のトラブル」は「なかった」が90.6%。賃貸取引現場ではおおむね円滑にIT重説が行われている様子で、重説の相手方は65.3%が「今後も利用したい」と答えている。
一方、15年8月から延べ約3年間にわたって行われている法人間売買取引におけるIT重説社会実験は、19年1月末時点で実質的な事例が1件のみと振るわない。同省によると、法人間取引では契約に至るまでの過程で物件について随時詳細な確認を行う傾向があるため、IT重説の必要性が低いという声もある。
しかし将来的に法人間取引についても制度上IT重説を利用可能としていくため、検証に値する事例数の蓄積を目指し、改めて社会実験を延長し継続実施することとした。
賃貸の実績踏まえ
同検討会ではこれらの検証結果を踏まえ、売買におけるIT重説の社会実験範囲を拡大し、個人を含む売買取引についても社会実験を行うこととした。法人間売買の実績は「十分な結果が得られたとは言い難い」(同省)ものの、賃貸取引における実施件数の増加と安定した運用状況を見て、実験範囲の拡大は可能と判断した形だ。
個人を含む売買取引での実験に当たっては、事業者団体や同検討会委員から「売買は賃貸に比べ説明項目や書類が多い」「スマートフォンしか持たない個人への重説には工夫が必要」など、様々な留意点について指摘がなされた。
そのため説明時間の事前通知や必要な書面の事前送付、トラブル検証のための録画等の義務付けなどの対応策を設けた上で、6月からおおむね1年間の予定で実証実験を行う方針を決めた。