不動産コラムColumn

所有者不明土地問題研究会

2019/02/07 

増加抑止へ新組織を提案

17年に「国内の所有者不明土地(不明地)の面積は、九州本島を超える約410万ヘクタール」という推計が発表され、大きな話題を呼んだ。その推計をまとめた所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也東京大学大学院客員教授、元総務相)がこのほど、第2期の最終報告として「不明地を増加させない社会」へ向け、土地の”受け皿”となる組織の具体化を提言した。

 

同研究会は、国土計画協会の事業の一環として調査研究を行う民間プラットフォーム。不明地問題の実態を調査し、その社会的な影響などについて国民に提示すると共に、解決策の政策提言を行うことを目的としている。

 

前回の最終報告では、地籍調査などを用いて「所有者不明土地は全国の20.3%にあたり、今後も急速に増加し、防止措置を講じなければ40年には北海道本島に匹敵する約720万ヘクタールに達する」と推計。今回の最終報告ではその抑制のため、「不明地を円滑に利活用し、適切に管理できる」「不明地を増加させない」「すべての土地で真の所有者がわかる」という3つの「あるべき社会」を提示した。

 

土地放棄の受け皿が鍵
第2期の主な検討課題は、このうち「不明地を増加させない」ための施策で、特に土地所有権を手放すことができる仕組みとその受け皿に焦点を当てている。

 

”受け皿組織”の方向性は2種類を想定しており、いずれも「公的色彩を持った機関」(最終報告)が行うこととする。一つは利活用が見込まれている土地を扱い、コーディネートを行うもの。所有者だけでは土地の売却が困難な土地について、第三者的な組織が宅建業法に抵触しない範囲でマッチングなどを行い、将来的な利活用につなげる。

 

もう一つは、直ちには利活用が困難な土地の取得・管理を行う組織。第一の新組織がコーディネートしても購入希望者が現れない土地なども対象とし、所有者から管理費用や公的負担などの相当額を受け取って、土地の引き受けと利活用、一定管理を担う。

 

所有者が判明している段階で、低未利用地をスムーズに手放す手段を提供し、将来の相続時などに不明地化するケースを抑止したい考えだ。

 

国も検討の集約へ
国も土地所有に関する基本制度の見直しについて、有識者会議で進めてきた検討の集約に入った。19年2月までに一定の方針を示すとしており、1月24日に開かれた国土交通省の国土審議会土地政策分科会特別部会(部会長・山野目章夫早稲田大学大学院教授)で、これまでの議論の取りまとめの素案を提示した。

 

同素案では、土地の利用・管理についての措置の方向性を整理。土地の特性を鑑み、土地所有権には本来的に一定の責任が伴うことを明記し、「まずは所有者自身による土地の適切な利用・管理を促すことが必要」としている。

 

また所有者以外の主体についても、土地の適切な利用・管理に携わることが、地域全体の利益につながるとした。

 

その上で、「土地を手放す仕組み」についても言及。ただし、「所有者が土地を放棄すること自体は必ずしも問題の解決に資するものではない」と念を押してもいる。所有者自身や自治体などによる利活用の検討を十分行ったものの、なお利用・管理または取得する意義を認める主体が存在しない場合に、国民負担の発生も踏まえた上で、「最終的に国が当該土地を譲り受ける手続きを設けることを検討すべき」とした。

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