不動産コラムColumn
国土審議会土地政策分科会特別部会
管理責任、土地所有者以外にも 不明地などで担う役割を議論
国土交通省は11月20日に国土審議会土地政策分科会特別部会(部会長・山野目章夫早稲田大学大学院教授)を開き、土地の所有や利活用、管理などについて、今後の土地制度の基本的な方針の検討を行った。
同部会は、主に所有者不明土地(不明地)への対策を講じるため、17年に発足。現在は人口減少社会における土地管理のあり方や、所有者をはじめとした関係者の役割などについて検討を重ねている。
今回は事務局を務める同省が、これまでの議論も踏まえ、土地に求められる利用・管理のあり方と関係者の役割について、「所有者の保有意思」「利用希望者の有無」などに応じた複数のパターンに分け、利用・管理の主体と内容を整理して提示。また、土地基本法が土地について「公共の福祉を優先させる」(同法2条)としていることや、日本国憲法も財産権について「公共の福祉に適合するように法律で定める」(29条2項)としていることなどから、同省は「土地所有権には責務が伴い、所有者には一定の役割が求められている」という見解を示している。
具体的には、所有者自身による適切な管理(委託含む)のほか、保有意思がなければ利用希望者への譲渡などを行い、利用の見込みもない土地であれば近隣住民や自治体などに相談して、主体的に管理の役割を果たすよう求める。
更に不明地などでは、隣地所有者や地域コミュニティ、行政等も関与し、所有者以外も土地管理の役割を担う場面があり得るとした。
行政の関与も必要か
こうした見解を踏まえ、会合では委員らが意見を交換。茅野静仁委員(三菱地所経営企画部長)は「土地管理とは、所有者など特定の誰かが考えることではなく、皆で考えねばならないこと」と賛意を示しつつ、一方で「土地管理費用の受益者負担については疑問。例えば空き地の草を刈って雑草の繁茂が抑えられたとして、それを『受益』として近隣住民が費用を負担するのはいかがなものか」と発言。
放置された土地などにおける外部不経済の解消は、行政を通じてでも所有者負担とすることが望ましいという考えを述べた。
加えて柚木茂夫委員(全国農業会議所専務理事)が、「土地に関する責務は、個人では果たすことが難しい部分もある。地域での合意形式プロセスも含め、行政の関与も必要になるのでは」と意見。土地の管理に当たって、行政機関が一定の役割を担うことの重要性を説いた。
また宇賀克也委員(東京大学大学院教授)は「土地基本法はあくまでも基本法で、全体的な方向性を示すもの。改正に向け、権利制限や行動規制などの印象を与えて国民からの反発を招かないよう、丁寧な説明が求められる」とし、永沢裕美子委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会代表理事)も、「土地について強い管理責任を問われるような感覚を国民が抱くと、課題解決に向けた方策も進まないので注意が必要」と語った。
更に「『放置土地』の概念」(三原秀哲委員・弁護士)や「『適正利用』の基準」(吉原祥子委員・東京財団政策研究所研究員)など、方針を示す際の用語に厳密性を求める意見も複数挙げられていた。
同部会では、今回を含めた議論の内容を集約した取りまとめを19年2月に提示し、20年に土地基本法などの改正につなげていく方針だ。