不動産コラムColumn

低廉物件の流通促進重視

2019/10/18 

全日不動産協会(全日、原嶋和利理事長)を母体とする政治団体の全日本不動産政治連盟(日政連、同会長)は10月17日、衆議院第一議員会館で行われた全日本不動産政策推進議員連盟(全日議連、野田聖子会長)の総会で、20年度の政策・税制改正の要望を提出した。

 

原嶋会長は冒頭のあいさつで所有者不明土地(不明地)や空き家の増加に触れ、「今回税制改正について要望した内容の中でも、低廉な物件の流通促進、あるいは不明地の発生抑止へ向けて、低廉物件譲渡の際の特別控除制度をぜひ創設願いたい」と強調。地方圏における低未利用不動産の流通活性化を訴えた。

 

また野田会長は、「現在、我が国の抱えている人口減少や地方の疲弊などの課題を踏まえ、空き家対策などについて、先手を打っていけるような政策を実現していかなければならない」と発言するなど、要望を基に検討を進めていく姿勢を示した。

 

不明地の発生抑止を
今回日政連が提出した要望では、原嶋会長が語ったように、政策・税制改正共に不明地や空き家などへの対策が重視されている。

 

具体的には、政策分野で「空き家流通等の促進のための調査に必要な情報の宅建士への情報開示」「空き家等の問題に対処する官民連携体制の構築」「空き家の国庫への帰属促進と利活用」の3点を要望。いずれも空き家や不明地、低未利用地の流通と利活用を促す趣旨の内容だ。

 

税制分野でも低未利用物件の流通促進策を筆頭に挙げる。原嶋会長が言及した「低廉な物件等に限定した長期譲渡所得の100万円特別控除制度の創設」のほか、「固定資産税の課税標準方法の見直し」「低額物件等の相続登記における登録免許税の特例措置」を要望。相続登記については、市場価値が低く売却損の生じやすい物件は未登記のまま放置されることの多い現状を鑑み、登録免許税を廃止した上で登記を義務化し、不明地の発生抑止と流通活性化につなげる意味合いがある。

 

住宅ローン控除等については「家屋の床面積要望の引き下げ」「築年数要件の廃止」といった要件緩和を求め、併せて既存住宅流通活性化に向けた新規住宅ローンの創設と新たな控除適用を要望。街づくり分野では、国土交通省が推進する「居心地がよく歩きたくなる街中」の創出に向けた特例措置の創設も希望した。

 

そのほか、近く適用期限を抑える住宅優遇措置の延長を要望。併せて恒久化と拡充も求め、特に「長期保有土地等に係る事業用資産の買い替え等の場合の課税特例」「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例」土地等の譲渡益に対する追加課税制度の停止」などを挙げた。

 

こうした要望を受け、国交省の青木由行土地・建設産業局長などが現在の取り組みや施策の方向性を説明し、全日議連の所属議員と意見を交換。その後全日議連の事務局長を務める井上信治衆院議員が「要望は全日議連として受け取り、関係閣僚や党役員に要請活動を行っていく」と方針を述べた。

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