不動産コラムColumn

【改正民法】焦点は瑕疵と配偶者居住権

2020/04/02 

今回施行される改正法で最も注目度が高いのは、17年に成立した改正民法だ。債権法関係規定を約120年ぶりに見直した大改正。特に、「瑕疵(かし)担保責任」から「契約不適合責任」へ、文言と概念を変更した点は非常に重要だ。

 

「契約不適合」は読んで字のごとく、「契約内容に適合していない」ことに対して責任を負うという考え方。従来の”隠れた”瑕疵の限らず、例えば売買時に買主が契約不適合の事実を知ることができたとしても売主の責任は免れなくなる。

 

これに伴い、売主の責任自体も増した。従来、買主の救済手段は「契約解除」「損害賠償請求」しかなかったが、新たに「追完(補修等)請求」「代金減額請求」も可能となる。補修等により後から契約に適合する状態にする(追完)よう求めることと、それがなされない場合に代金の減額を求められるという権利だ。

 

加えて、買主が権利を行使できる期間も変わる。瑕疵担保責任では、買主が瑕疵を知った日から1年以内に損害賠償請求等を行う必要があったものの、契約不適合責任では同じく知った日から1年以内に、売主に”通知”を行えばよいこととする。また、権利の時効は、従来の「権利を行使できる日から10年」に加え、「買主が自らの権利を行使できることを知った時から5年」となる。

 

総合的に見て、買主の権利を保護し、売主の責任範囲を広げる意味合いが比較的強い改正内容と言えるだろう。

 

住まいと生活を担保
同じく民法のうち、相続法関係規定も18年に改正された。大部分の改正事項は19年7月に施行されたが、残る「配偶者居住権」の規定がこの4月1日に施行される。

 

これは、配偶者が相続発生時に居住していた被相続人所有の建物について、終身または一定期間、配偶者がそのまま住み続けるという権利。住宅の所有権と居住権を切り分けて財産を評価し、居住権のみの相続を可能とすることで、住まいと生活資金の双方を確保しやすくする。

 

住まい手にとっては大きな恩恵のある新制度ながら、不動産事業者にとっては悩ましい部分でもある。ある意味で、相続は事業者にとってはビジネスチャンス。無料相談等で相続コンサルティングを行い、信頼関係を構築して円満に相続物件の扱いを任せてもらうといった手法も一般的だ。しかし、その相続物件に配偶者居住権が設定された場合、市場における評価は現段階では不透明。周知の通り、借地権が付着している底地は扱いが難しく、売買が困難な上にその価額も総じて低くなることを考えれば、配偶者居住権付きの物件も同様の傾向が予想される。

 

なお同制度は、施行日である4月1日以降に開始した相続について適用される。つまり、20年3月31日までに死亡した被相続人の財産については適用されない。

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